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控訴審第4回期日の報告

 

原告訴訟代理人弁護士 西口加史仁

 

 

第1 はじめに

 2021年7月14(水)14:00から、本件の第4回口頭弁論期日および仮処分審尋期日が開かれました。期日では、被告側証人尋問および原告本人尋問が行われ、今後の予定が定められました。以下、期日の内容について報告します。

 

第2 証人尋問・原告本人尋問

1 被告会社取締役の証人尋問

(1)証人の略歴

同証人は、被告会社の取締役であり、会社内部に設置されている「リスクコンプライアンス委員会」の副委員長も兼任する地位にあるものです。また、同人は在日韓国人3世であり、原告と同じく韓国にルーツを持ちます。

(2)主尋問

主尋問は、被告会長代理人弁護士が行いました。同主尋問では、被告会社では「差別はなかった」と抽象的に述べることに終始しました。

(3)反対尋問

反対尋問は南部秀一郎弁護士が担当しました。同反対尋問は、「同取締役が会社内で広範囲の権限を持ち、本来社内のハラスメント対策を行う立場なのに、何ら対処することが期待できないことを明らかにする」ことを獲得目標において行われました。

そして、同尋問で、「地裁で文書配布行為の違法性が認められたにもかかわらず、リスクコンプライアンス委員会および取締役会などで、議題に挙げられることすらなく、結局何の対策もおこなっていないこと」など重要な事実が明らかになりました。

 

2 被告会社従業員の証人尋問

(1)証人の略歴

同証人は被告会社に勤める社員で、現場主任の立場にあるものです。また、同人も在日韓国人3世であり、原告と同じく韓国にルーツを持つものです。

(2)主尋問

主尋問は、被告会長代理人弁護士が行いました。同尋問も上記取締役と同様に、抽象的に「差別はなかった」と述べるに終始しました。

(3)反対尋問

反対尋問は、引き続き南部秀一郎弁護士が担当しました。同反対尋問は「同従業員の偏った見解(日本は自虐史観だとか、会長に卑屈さを感じるくらい感謝していることなど)を明らかにして、それが被告会社の社員共有の空気となり社員ぐるみの原告攻撃につながっていることを明らかにする」ことを獲得目標において、尋問が行われました。

そして、同尋問で、「被告における経営理念感想文の中で、同従業員が『まだフジ住宅で働くのでしょうか?』などと原告に向けて書いていること」など重要な事実が明らかになりました。

 

第3 原告本人尋問

(1)主尋問

主尋問は、金星姫弁護士が担当しました。なお、金弁護士は、ホットラインで、原告からはじめに相談を受けた弁護士です。このホットラインでの相談が本件裁判を提訴するきっかけとなりました。

同尋問では、「被告会社における自身の現状がどれだけ大変なものとなっているか」について、原告自身の言葉でありのままに語られました。

(2)反対尋問

反対尋問は、被告会長・被告会社それぞれの代理人から行われました。

同尋問では、「原告側が『ヘイトハラスメント裁判』などと名付けたから、被告が社会から「ヘイト企業」と揶揄されているのではないか」との尋問まで行われました。

 

第4 仮の差止めの仮処分に関する審尋期日

加えて、原告側は、被告会社職場内における文書配布行為を仮に差し止めることを内容とする仮処分を申立てました。同仮処分の審尋期日が、本案の口頭弁論期日に引き続いて開かれました。なお、同仮処分についても、同一の裁判体に係属し、同じ裁判体が判断します。

そして、原告側の仮処分申立てに対して、令和3年8月20日までに、被告らから反論がなされることになりました。それを受けて、原告側に再反論があれば主張し、その後裁判所からの判断が出されることになります。決定が出る日時について、裁判長は「具体的には決めていない」と明言することを避けています。もっとも、弁護団では、本案判決と同時に決定が出る可能性があると考えています。

 

第5 まとめ

今回の原告本人尋問は、過去のしんどかった状況をわざわざ思い出し、二度と見たくもない文章を再度見返すことになり、負担がとても大きかったと思います。原告自身、報告集会において、その辛さを「裁判に殺されるのではないかと思った。」とまで表現されていました。しかしながら、当事者の言葉には力があります。しんどさを耐え抜き、今回の尋問を経たことで、原告の今の状況がどれだけ大変なものとなっているのか、裁判官にもよく伝わったはずです。また、原告はとても落ち着いて証言し、勝負強さが全面に出た口頭弁論手続きとなりました。

このように、今回の尋問では、被告会社が、裁判所で違法性を指摘されてもなお、何も対策をとらず、むしろ原告の被害が加速している現状などが浮き彫りになりました。次回は控訴審の判決期日です。原告が安心して働ける職場にするため、これからも原告・弁護団・支える会が一丸となってこの裁判に取り組んでいきます。引き続き、温かいご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

 

第6 以降の予定

控訴審判決  2021年11月18日(木)14:00~

仮処分決定  未定(ただし、上記控訴審判決と同時に出される可能性がある)

以上

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