フジ住宅株式会社で何が起こったの?
1.全社員に対するヘイトスピーチ文書の配布
フジ住宅の今井会長は会社の経費を使って業務とは何ら関係のない人種差別的内容を含んだ新聞記事のコピーやフェイスブック記事のコピー、更にはDVD映像をパート、アルバイトを含む全社員に毎日、時には一日に複数回配布しています。配付資料のなかには、いわゆる「在日特権」デマの典型である、市民税・住民税が免除されているなどといった内容が含まれていますが、原告女性の給与から市民税、所得税控除をおこなっているはずの会社が、このような文書を配布することは意図的な差別扇動に他なりません。さらに、配布された物のなかには、いわゆるヘイト本、嫌韓・嫌中本も含まれています。
加えて、会社・今井会長は配付資料の感想を業務日誌などに書くよう社員にうながしており、その感想文が配付資料として全社員に配布されています。配布された感想文には「( 韓国人は)全般的に自己主張が強い,自分を有利にするための上手な嘘を平気でつく」「(韓国人は)嘘が蔓延している民族」(写真上)、「特ア3国はそのような真正直な気持ちではとても太刀打ち出来ない輩集団」(写真下、“特ア”とは、中華人民共和国・大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国を差す、インターネット上で侮蔑的意味をもって使われる用語)などのヘイトスピーチそのもののが含まれています。しかも、今井会長自身がそのヘイトスピーチに下線部等を記して強調しています。
2.政治的文書の配布と政治活動への参加動員
今井会長が配布する文書のなかには、第2次世界大戦中の、日本によるアジアの国々や人びとへの加害行為を、低く評価したり、なかったことにしようとする歴史観を宣伝し、いわゆる「自虐史観」を攻撃する内容が多く含まれています。なかには日本軍「慰安所」で被害を受けた女性たちを「売春婦」「高級娼婦」などの言葉を使いながら批判する文書もありました。
そして、そのような歴史観を共有している特定の歴史教科書を、中学校教科書として採択させるための政治活動の一環として、教科書展示会への参加と会場でのアンケート記入を全社員にうながしています。また、教育委員会等への意見メールを送信したり、署名活動に参加することもうながしています。実際に、多くの社員が、これらのうながしに応えて、活動に参加しています。
これらの文書の配布や参加動員は、表面上は社員に受け取りや参加を強制するものにはなっていません。しかし事実上、ほぼ全ての従業員が受け取っている資料を断ったり参加を拒否することは困難で、原告女性は「意に反しても受け取っておいたほうがいいのではないか」など不要な心配をせざるを得ず、業務に支障が生じています。
3.ヘイトスピーチや政治的活動への参加動員は人格権を侵害
日本が加入・批准している人種差別撤廃条約や自由権規約(国際人権規約B規約)が法規制を求めているヘイトスピーチは、日本国内でも京都朝鮮初級学校を襲撃した「在日特権を許さない市民の会」等に対する大阪高裁判決(2014年12月最高裁が被告の上告を棄却したことによって確定)などでも表現の自由による保護には値しないと指弾され、高額の賠償が命じられています。これらのことから、違法行為である可能性が極めて高いヘイトスピーチを、会社代表者である今井会長自らが、会社経費で大規模におこなっていることは、在日コリアンである原告女性の人格権をひどく侵害する行為です。
さらに、業務とはまったく関係のない特定の政治的主張が掲載された資料等を配布したり、就業時間内に政治的活動への参加動員を事実上強要されることによって、原告女性は不要な心配を強いられたり、知りたくもない同僚たちの政治的主張を知らされることになり、精神的な苦痛を受け続けています。このことも原告女性の就業環境を不必要に乱し、人格権を侵害する行為であることは明らかです。
4.会長、会社の違法行為(パワーハラスメント)の責任を追求
そのため、今井会長の行為は厚生労働省が定義するパワーハラスメントであり、民法709条(故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う)による責任を負うことを求めています。
さらに、フジ住宅株式会社にたいしては、会長がパワーハラスメントをおこなったことにより、会社法350条(株式会社は、代表取締役その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う)と民法415条責任(労働契約法5条・職場環境配慮義務違反)、民法709条(前述)にもとづく責任を負うことを求めています。
5退職勧奨など悪質行為による精神的苦痛に対し3300万円の損害賠償を請求
原告女性は、いきなり裁判に訴えたのではなく、2015年1月、会社に対して改善を申し入れ、同年3月には大阪弁護士会への人権救済の申し立てをおこないました。それにもかかわらず、会社側はまったく改善の努力を怠ってきました。そればかりか、よりにもよって同年8月、原告女性に退職勧奨をおこなったのです。
そこで、原告女性はやむにやまれず、裁判に訴えることを決意しました。被告らの行為が極めて悪質であることから、原告女性が被った精神的苦痛に対する損害賠償として3千万円を、弁護士費用として3百万円、合計3千3百万円の支払いを求めています。
会社が全従業員に配付した資料に掲載された社員の感想文。「(韓国は)嘘が蔓延している民族性」などと書かれている
会社が全従業員に配付した資料に掲載された社員の感想文(抜粋)。「(韓国人は)上手な嘘を平気でつく、日本人への警戒心が非常に強い、利己的な人が多いことを感じました」などと書かれている
会社が全従業員に配付した資料に掲載された社員の感想文。「特ア3国はそのような真正直な気持ちではとても太刀打ち出来ない輩集団」などと書かれている。