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第13回口頭弁論の報告

 

原告訴訟代理人弁護士 玄 政和

 

2018年11月1日午前10時30分から、大阪地方裁判所堺支部にて、ヘイトハラスメント裁判の進行協議が行われ、その後、続けて、第13回口頭弁論期日が開かれました。

 

1 期日の内容

期日では、原告側からは、期日間に提出した第17準備書面及び第18準備書面を陳述し、証拠として、原告の陳述書や、ヘイトスピーチに関する被害実態調査の報告書等を提出しました。会社からは準備書面8、会長からは第7準備書面が提出されました。

口頭弁論期日では、裁判所から、今後原告が会社に引き続き勤務し続ける場合、判決による解決では、文書配布等について会社や会長が遵守すべきルールを定めることができないため、和解による解決が望ましいと考えており、次回以降、和解による解決の可能性を協議検討していきたい旨の話がありました。

 

2 期日での意見陳述

 弁護団の馬越弁護士より、第17準備書面及び第18準備書面の内容について意見陳述を行いました。続いて、会社の代理人から準備書面8について、会長の代理人から第7準備書面についての意見陳述が行われました。

 

3 原告が第17準備書面、第18準備書面及び意見陳述で主張したこと

 第17準備書面は、原告の被害を明らかにする前提として、職場における労働者の人格権に関し、過去の裁判例がどのように理解しているかを明らかにしたものであり、第18準備書面及び意見陳述は、裁判所からの求めに応えるとともに、原告の陳述書を引用するなどして、原告の被害を具体的に明らかにしたものです。

 

4 被告側の意見陳述の内容

 まず、会社の代理人からは、①文書配布は「自虐史観」の払拭のためであり、中国・韓国に対する批判が文書の主な内容ではない(配布文書全体の0.03%にすぎないという主張)、②配布文書を読むことは強制していない、④文書の配布による組織の一体感の高まりと一部の者の疎外感というのは常に背中合わせにある、との内容の意見陳述がありました。

 会社側はこのように、文書配布の目的が自虐史観の払拭という業務に全く関係ないものであることを自認し、さらに、文書の配布により、原告に会社での疎外感を生じさせていることも自認しました。また、中国・韓国に対する批判が配布文書全体の0.03%にすぎないという主張についても、会社の配布資料の中で提訴一年前の経営理念感想文のみを取り出して他の配布資料を除外して計算したものであり、かつあくまでも被告らの基準で判断したものに過ぎません。なお、原告側で2013年2月~8月の半年間で配布された文書について人種差別を助長するという観点から問題のある箇所をピックアップし、400箇所以上特定して主張しており、これをうけて、裁判所も、前回の口頭弁論期日において、業務外の資料として配布している文書の中で、中国・韓国を批判する文書が他の文書に比べ3倍程度あるということを述べていました。

 次に、会長の代理人からは、①会長の活動の主目的は中国・韓国への批判ではなく「自虐史観の払拭=国民が事実を知ること」にあること、②自虐史観から脱却することは、各人の業務と会社全体としての事業運営に副次的なプラスの作用をもたらしているため、事業に全く無関係な配布資料というものはないつもりであること、③資料の閲読や賛同は任意であること、④業務と直接関係しないものに触れて、一個人として総合的な研鑽を図ることは非常に重要であり、本件の資料配布もそのような位置づけのものと理解される必要がある、との内容の意見陳述がありました。この点も、会社の主張と同様、業務に直接関係ない目的での配布を自認しているものです。

5 次回以降の予定

1で述べた通り、次回以降、原告側・被告側双方で、和解案について検討を行い、裁判所との間で協議を進めることとなりました。しばらくは、支援者の皆様に傍聴に来ていただくような、法廷における口頭弁論期日は設けられず、原告側・被告側・裁判所のみが出席する和解期日において和解に向けた協議を行うこととなりますが、引き続き原告・弁護団へのご支援のほど、何卒よろしくお願いいたします。

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