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大阪弁護士会によるフジ住宅株式会社に対する人権救済勧告について

 

1 大阪弁護士会は、2019年7月11日付で、フジ住宅株式会社に勤務する在日コリアン3世の女性が、人権侵害に対する救済措置の申立を行った件について、フジ住宅株式会社に対し、①その従業員に対し、大韓民国等本邦外出身者の国民性を侮蔑する文書を配布しないこと、②その従業員に対し、中学校の歴史及び公民教科書採択に際し、特定の教科書を採択させるための運動に従事させ、その報告を被申立人にするよう求めないこと、を勧告した。

 

2 本事案は、東証一部上場企業たるフジ住宅株式会社において、同社及び同社代表取締役会長が、①全従業員に対し、人種民族差別的な記載あるいはこれらを助長する記載のある文書を大量かつ反復継続的に配布し、②全従業員に対し中学校の教科書採択にあたって、特定の教科書が採用されるように教科書アンケートの提出等の運動に従事するよう動員した事案である。

 上記女性は、フジ住宅株式会社及び代表取締役会長に対し、これらの行為(さらには提訴後に同人を非難する文書を配布した行為)について、職場環境配慮義務に違反し、同人の人格権を侵害するとして、大阪地方裁判所堺支部に損害賠償請求訴訟を提起し、同事件が現在同支部に係属中である。

 

3 本勧告は、フジ住宅株式会社が全役職員に配布した文書について、「文書には、いずれも韓国又は韓国国民に対する批判的論評の域を超えた侮辱的表現が随所に見られる上、被申立人代表取締役会長が、侮辱的表現部分に丸印や下線を引くなどしている」と認定し、これらの文書配布行為が「いずれも被申立人の業務に必要とは言いがたく、被申立人の全役職員に対して上記文書を配布することを保障する必要性に乏しい」と認めた。そして、被申立人の直接の目的とするところが申立人を職場から排除することや同人の人格権を侵害することでないとしても、上記の行為は申立人の人格権を侵害していると評価した。以上の認定、判断を、弁護団は高く評価したい。

  また、本勧告は、フジ住宅株式会社が教科書採択について配布した文書について、「創業者であり被申立人役職員に強い影響力を持つと考えられる被申立人代表取締役会長が、被申立人の全職員に対し、特定の教科書を採択させるための運動に従事するよう強く推奨するとともに、かかる運動に従事したときは、その内容を上記代表取締役会長に報告することを求めている」と認定し、「被申立人のこの一連の行為は、被申立人の業務に必要とはいい難」いと認めた。そして、本勧告は、「被申立人は、これらの収集した報告をどのようにでも使える立場にあるので、例えば、上記採択運動に従事したか否かで、従業員の待遇に差をつけることもできる」として、「かかる運動に従事したか否かによって、申立人を含めた従業員がその待遇などにおいて差別的取扱いを受ける可能性が高い状況下にあるので、申立人を含めた従業員が自己の思想・良心を侵害されるおそれが高いことを否定することはできない」とした。以上の認定、判断についても、弁護団は高く評価したい。

  弁護団としては、以上のとおり、本勧告を歓迎する。

 

4 当弁護団は、フジ住宅株式会社に対し、本勧告を真摯に受け止め、判決を待たずして、本勧告に従い、直ちに人種差別的・民族差別的な記載のある(人種差別民族差別を助長する記載のある)文書の配布、教科書採択についての動員行為等従業員の職場における人格権的自律を脅かす行為を中止するよう強く求めるものである。

 

  2019年7月16日

フジ住宅ヘイトハラスメント裁判弁護団

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