第10回口頭弁論の報告
原告訴訟代理人弁護士 冨田真平
2018年3月8日午前10時30分から、大阪地方裁判所堺支部にて、ヘイトハラスメント裁判の進行協議が行われ、その後続けて、第10回口頭弁論期日が開かれました。
1 進行協議期日・第9回口頭弁論期日
口頭弁論では、原告側から前回陳述留保となっていた第12準備書面、第13準備書面を陳述し、さらに今回新たに提出した第14準備書面と第15準備書面を陳述しました。
また第14準備書面の内容について、原告代理人の殷弁護士から意見陳述がありました。これに対し、今井会長の代理人から次回行う主張についての意見陳述がありました。
2 第14,15準備書面で原告側が主張したこと
第14準備書面では、これまでの被告の主張に対する反論を行いました。
被告らは、本件をもっぱら被告今井会長や被告会社の「表現の自由の問題」であるとの前提で意見論評であるなどとの反論を繰り返していますが、これらの主張は①人種差別表現において「事実摘示」か「意見・論評か」という区別が無意味である点や②本件で原告が問題としているのが職場において優越的な立場にある使用者である被告らから労働者である原告に対して行われた行為であり被告らのこれらの行為が職場環境配慮義務に違反するかが問題となっている点などについて正しく理解していない主張であり、原告の主張とかみ合わない反論となっていました。今回の書面では、まずこの点について指摘しました。
その上で職場環境配慮義務について詳しく書かれた中央大学法科大学院の山田教授の意見書(支える会会報別冊として配布予定です)も提出し、以前に提出した板垣教授の意見書とともに、原告の主張をさらに補足しました。
3 被告今井会長が主張したこと
被告今井会長の主張については、その予告が口頭でなされただけですので、次回書面で提出される書面を改めて確認した上で反論を行う予定です。
ただ、以下の2点について、少しだけコメントさせていただきます。まず、被告会長の主張は相変わらず表現の自由を強調し、職場環境配慮義務を理由に表現行為を制約することが組合の言論の制約や労働者の言論の制約等にもつながるなどとの主張を行っていましたが、今回原告が問題にしているのは、上記のように職場において優越的な立場にある使用者が労働者に行っている行為であること(だからこそ使用者が負う職場環境配慮義務が問題になっているのです)であり、今井会長の主張はやはりこの点を正しく理解していない主張と言わざるを得ません。また、原告の被害について、単なる不快感にすぎないというような主張がなされました。これは、原告の被害の重大性を理解していない反論であると言わざるを得ません(これを聞いて、かつてセクハラが問題になった当初、加害者が同じようなことを言っていたことを思い出しました)。
4 次回以降の予定
次回、第11回口頭弁論期日は、2018年5月17日午前11時からです(従来と同様、口頭弁論期日に先立って、進行協議期日が開かれます。)。
今後、いよいよ裁判は佳境に入り、証人尋問へと進んでいきます。皆様には、ぜひ裁判期日に足を運んでいただき、法廷をこちら側の支援者で埋め尽くし、原告を勇気づけていただきたいと思います。
今後ともご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
期日の傍聴抽選券は140枚ほど配布されました。それに対して、期日終了後に近くの会場で開催した支援者集会には80名ほどの皆さんに集まっていただきました。傍聴券の抽選、期日終了してすぐに帰られた方もおられたので、今回は100名ほどの原告側支援者に来ていただいたことになるかと思います。被告側は今回40名ほどの支援者を集めており、その数は前回と比較しても増えています。引き続き、より多くの皆さんに傍聴支援に駆けつけていただけますようお願いいたします。