第14回口頭弁論期日の報告
原告訴訟代理人弁護士 安原 邦博
2019年5月16日、大阪地方裁判所堺支部にて、午後1時30分からヘイトハラスメント裁判の進行協議が行われ、続けて、午後2時から第13回口頭弁論期日が開かれました。
1 期日の内容
期日では、期日間に会長が第8準備書面を、会社が準備書面9を提出したことから、それらに対する反論等を次回までにすることになりました。尋問についても次回以降に検討される予定です。
ところで、進行協議において、裁判所が、ブルーバッジを着けた傍聴希望者が多数来ている旨を被告側代理人に述べていました。ちょうど本期日の前日(5月15日)に、会社が、「南木隆治」という人物のブログとされる「『フジ住宅』を不当に訴える反日裁判と、反日思想を排す。『フジ住宅』は「ヘイト企業」ではない。」を社内配布しているのですが、同ブログは、本期日での会社に対する傍聴支援を呼びかけた後、ブルーバッジについてのコメントに1頁程を費やしており、末尾に「今回堺の裁判所が当日ブルーリボン(バッジ)をはずすように措置をとられる場合(とられない可能性をまだ強く願っています。)は、何か新たな対策を考える」などと記しています。
2 期日での意見陳述
弁護団の冨田弁護士が、次回までに提出する反論予定について意見陳述を行いました。続いて、会社の代理人から準備書面9について、会長の代理人から第8準備書面についての意見陳述が行われました。
3 被告側の意見陳述の内容
先に被告側の意見陳述の内容をご紹介します。これら被告側の意見陳述は、まさに、彼らの「意見」(=考え)を表しています。
会社代理人は、資料配付等について異議を申立てた原告に対して逆に退職勧奨をしたことについて、「原告に充実感をもって生きてもらうためには、社風が原告にとってストレスとならない他の会社に移籍することも選択肢の一つでないかと考え」、「すぐに他の勤務先が見つかるかどうかも分からないため、生活保障の観点から300万円の支払いを提示した」だけで「そもそも被告会社の方で原告に対し会社を辞めるよう勧めたという事実自体がない」、とか、「会社として原告のためを想って行ったことが、極端に悪い方向に受け取られるのは、残念」などとの意見を述べました。
会長代理人は、「今井の思いに対しては、そういった思考方法や経営手法には共感できない、同意できないといった批判が原告側からなされるのではないかと想われます。しかし、それは好き嫌いの次元の問題であって、違法適法などと線引きするべきものではありません」などとの意見を述べました。
4 原告側の意見陳述の内容(冨田弁護士)
会社は、第8準備書面において、原告の訴訟提起前1年間に配布された経営理念感想文のみを取り上げて、そのうち中国・韓国を批判する内容は全体の0.03パーセントなどと主張します。
しかし、会社において会長と会社が一体となって配布している全ての文書を見れば、2013年における約半年分だけでも、ヘイトスピーチないしこれらに類する人種的民族的差別を助長するような内容の文書が約400も存在します。不動産会社でかような文書がかような量で配布されていることは、原告のおかれている職場環境が、いかに人種民族差別的な言動の蔓延したものであるかを示しているといえます。
もちろん、被告らの文書配布行為は、その量のみが問題なのではなく、その内容、配布の態様、文書配布による効果等に照らして、原告が在日コリアンとして人種民族差別的な言動にさらされずに就労する権利等を侵害しているのです。
5 次回以降の予定
次回期日は、2019年7月18日、大阪地方裁判所堺支部にて、午後2時から(進行協議(非公開)は午後1時30分から)開かれます。今後とも、原告へのご支援のほど、何卒よろしくお願いいたします。
今回も、多くのみなさまに傍聴支援に駆けつけていただき、大変ありがとうございました。当日は126枚の傍聴抽選券が配布されました。それに対して、支援者集会への参加者数は61名(弁護士除く)ありました。支援者集会に参加されなかった方もおられたことを考えると、被告側支援者とほぼ同数と推察できます。これまでもそうでしたが、被告側支援者のなかには、悪質なヘイトスピーチを常習的に行う者が複数名含まれています。原告が安心して法廷に臨む環境をつくるため、次回以降も、これまで以上の傍聴支援のご協力をお願い致します。