完全勝訴しました
2021年11月18日、控訴審で勝訴判決が言い渡され、22年9月8日、最高裁が被告らによる上告棄却・不受理を決定。控訴審判決が確定しました。
最高裁決定をうけて:原告のメッセージ
本日、2022年9月9日。2015年8月31日に東証一部上場企業(現、プライム市場)のフジ住宅と会長を相手に提起した裁判が被告側であるフジ住宅と会長による最高裁への上告が棄却されたことで高裁判決が確定しました。7年懸けての本当に長い裁判でした。高裁判決が確定してすごくホッとしています。そして、なによりも長い期間、この裁判に関わってくださいました多くの支援者一人一人に感謝の気持ちを示したいと思います。本当にありがとうございました。その支援がなければ、ここまで頑張れなかった、この素晴らしい判決はもたらされなかったと思います。みんなで勝ち取った判決だからこそ、飾りにせず、価値あるものにしていくことが大事になってくる、そのためにもこの判決の中身を多くの人や企業、行政に知っていただきたいと思います。
判決は出て終わりではありません。まずは、この裁判で実際に判決を承けたフジ住宅と会長が、この結果を真摯に受け止めることは勿論、判決の結果だけでなく、判決の中で示された問題点を理解し実行につなげてこそ意味を持つものです。残念ながら一審判決後に、真逆の行為が繰り返されたことを思うと、心から喜べない気持ちになり不安になっています。早く、ちゃんとした謝罪と過去に私に対して向けられた多くの酷い言葉により壊れた職場での人との関係を企業として責任を持って回復出来る環境を作っていただきたいと切に願っています。これまで配布された人を分断するような差別的な配布物や私を罵るような表現が書かれた従業員の感想文は、今も社内ツールやHPに残されています。判決にも書かれていますが、差別を醸成するような環境を改善し、真に従業員一人一人が安心して健全に働ける環境を目指して欲しいと思います。
また、教科書展示会への行動についても、何の説明もなく無かったかのような扱いで終わらせず、今一度、ちゃんとした説明が従業員にも社会にもなされるべきだと思います。同じようなことを繰り返さないためには必要なことだと思います。
大変なことですが、会社も従業員も考え、変わることで、これから企業に求められる人権尊重の分野においても、この裁判を活かし問題を乗り越えて、立派でやさしい会社になっていくと思います。。
今回、最高裁の決定により判決は確定しました。2013年の労基署へ救いを求めたことに始まり、弁護士会への救済申立て、その後に退職勧奨を承けた私にとって、裁判は最後の希望でした。だからこそ、厳しい状況に耐え続けた貴重な7年を、そして裁判制度の意味を蔑ろにしない会社であることを示していただきたいと思います。
今回の判決が多くの企業や労働現場で活かされ、一人一人が尊重されて働くことが出来る、多様性が当たり前に大切にされる社会の実現を後押しすることにつながれば、嬉しいです。そして労基署はじめ、しっかりと対応してもらえるシステムが出来ることで、同じような想いを抱えている人が今度はもっと簡単に救いを求められるようになることを願っています。
裁判は終わりましたが、この後こそが結果になっていきます。私は自分が出来ることを、なんとか続けていこうと思っています。
様、是非、フジ住宅の今後を気にかけていただけますよう、お願いいたします。 原告 記
2022年9月9日
最高裁決定をうけて:弁護団声明
フジ住宅ヘイトハラスメント裁判原告弁護団
1 東証一部プライム(旧「一部」)上場企業であるフジ住宅株式会社に勤務する在日コリアン3世の女性である原告が、フジ住宅が職場で人種民族差別を助長する内容の的資料の配布したこと、や及び社員を特定の教科書を公立中学校で採択させる運動への動員したこと、、並びにそれらの行為によって精神的苦痛を受けたとして慰謝料を求めて提訴した原告を非難する感想文等の資料を配布したことに対し、フジ住宅及び同社の今井光郎会長を被告として、損害賠償及び資料配布の差止めを求めた訴訟について、本年9月8日、最高裁判所第1小法廷(裁判官山口厚長、深山卓也、安浪亮介、岡正晶、堺徹)は、損害賠償として132万円の支払いを命じるとともに資料配布の差止めを命じた控訴審の判決(2021年11月18日大阪高等裁判所第2民事部)に対するフジ住宅及び今井会長の上告を棄却し、上告審として受理しない旨の決定をした。
2 これにより、上記控訴審判決が確定し、フジ住宅及び今井会長が行った、①社内で全従業員に対して、人種民族差別を助長する内容の的資料を大量かつ反復継続的に配布した行為、②地方自治体における中学校の教科書採択にあたって全従業員に対して特定の教科書が採択されるようアンケートの提出等の運動に従事するよう動員した行為、及び、③本件訴訟の提訴後、社内で原告を含む全従業員に対して原告について「温情を仇で返すバカ者」、「腹が立って・殴り倒してやりたい気持ちです(中略)クズと関わっても仕方ありません」「原告は今も在籍して働いていると思うと虫唾が走ります」「他を陥れることに心血を注ぐ生き方ではなく、在日としての過剰なまでの被害者民族意識を捨て、もっと日本の良さに目を向けられれば、人生も変わっていただろうと思います」などと侮辱・的文言や差別的悪罵に加え身体に対する攻撃を示すまでほのめかす内容の従業員の感想文等を大量かつ継続的に配布した行為の違法性があることが司法の場において確定された。
3 このたび最高裁が確定させた控訴審判決は、民族的出自等に関わる差別的思想を醸成する行為が行われていない職場又はそのような差別的思想が放置されることが無い職場において就労する労働者の人格的利益を認め、これを前提に、人種差別撤廃条約や、いわゆるパワハラ防止法の趣旨にも言及した上で、使用者が、労働者に対する関係職場環境配慮義務としてで、民族的出自等に関わる差別的な言動が職場で行われることを禁止するだけでは足りず、そのような差別的な言動に至る源となる差別的思想が使用者自らの行為又は他者の行為により職場で醸成され、人種間の分断が強化されることがないよう配慮する義務があると認めた。また、控訴審判決は、一審判決でその行為の違法性が認められた後もフジ住宅及び会長が上記①及び③②の行為を続けたことなども踏まえて、対象を㋐韓国の民族的出自等を有する者又は韓国に友好的な発言若しくは行動をする者に対する侮辱の文書及び㋑原告を批判し又は誹謗中傷する文書と特定した上で配布①の行為の一部及び③の行為のこれらの行為の差止めも認めた。
このように職場における労働者の人格的な利益及びその保護のためのに課せられた使用者の義務を重視することを明確に示し、さらに原告の被害を適切に捉え、その人格的利益の実効的な保護を図るために差止めまで認めた控訴審判決を最高裁判所が支持したことは高く評価できる。
4 また、このように、また、このたびの最高裁決定は、控訴審判決は、特定の者個人を対象名宛人としていない人種民族差別的行為について、不法行為に基づく損害賠償及び差止めに係る違法性を認めたものである。日本の法制度においては、不法行為に基づく請求をするには当該請求者の権利利益が侵害されたといえる必要があるところ、これまでの司法判断では、特定の者を名宛人としない差別的行為(例:公道や、テレビ、ネット上でなされる特定の属性に対する差別的言動)がなされる場合、個人の権利利益が侵害されていることを認めず、不法行為に基づく請求権を否定してきた。しかし、このたび最高裁が確定させた控訴審判決は、上述のとおり、自己の民族的出自等に関わる差別的思想を醸成する行為が行われていない職場又はそのような差別的思想が放置されることが無い職場において就労する労働者の人格的利益を認め、自己が明示的に名宛人とされていなくても不法行為上の請求ができることを認めたのである。
5 当弁護団は、フジ住宅及び今井会長に対し、確定した司法の判断を真摯に受け止め、その理解を深めて、①人種民族差別的今後ヘイトスピーチ資料の配布、や教科書採択についてへの動員行為等、労働者の職場における人格的利益を侵害する行為を二度と行わず、②すでに社内に蔓延している差別的思想・差別的言動を排除するために必要な措置をとり、③人種差別撤廃条約やヘイトスピーチ解消法、労働法令の遵守及び、並びに、④役職員の人種的及び・民族的多様性並びに及び信条(政治的信条を含む。)の多様性の尊重を事業運営の基本に据えるよう強く求める。
また、あらゆる職場で、労働者が民族的出自等に関わる差別的思想を醸成する行為にさらされず、そのような差別的思想が放置されることのない環境で就労できるよう、使用者に対し、差別的な言動や思想良心の自由を脅かすような言動を行わず、差別的思想が醸成されることのないように配慮することを求めるとともに、労働者に対し、このような配慮を尽くすよう使用者に求めることを呼びかけるものである。
以上
2022年9月9日
被告(フジ住宅、今井光郎会長)による上告却下・棄却と高裁判決の確定をうけて
ヘイトハラスメント裁判を支える会
本日、最高裁判所は、1審(大阪地方裁判所堺支部)で、被告らに110万円の損害賠償金の支払いを命じ、控訴審(大阪高等裁判所)で132万円の損害賠償金の支払いを命じた、フジ住宅ヘイトハラスメント裁判について、被告(フジ住宅株式会社、今井光郎代表取締役会長)らによる上告を棄却する判断をおこなった。原告の全面勝訴に近い司法判断であった、控訴審判決が確定したことを、歓迎したい。
とりわけ、控訴審判決が、一定の範囲を示したうえで、文書配布行為等の差し止めを認め、同時に仮処分を決定したことによって、被告・フジ住宅社内での人種差別的文書及び、原告を非難、差別、誹謗中傷する文書の配布は行われなくなっている。原告の人権救済について、実効性の高い効果をもつ司法判断が確定したことは、大きな意義をもつと考える。
また、控訴審判決は、日本で働く、すべての外国にルーツをもつ労働者が、職場で人種差別的言動によるレイシャルハラスメントをうけることなく、働く権利を有していることを、始めて認定した、画期的な司法判断である。私たちは、その点についても、注目している。
とくに、控訴審判決は、法が定義するヘイトスピーチにはあてはまらないものの、特定の歴史認識や韓国等の政策に対する意見・論評・感想であっても、特定の国民をステレオタイプ化する、または中国や韓国に親和的な政治家等に対する人格攻撃や感情的反発を表す内容が含まれる配布物について、被告らが「使用者の優越的地位を背景に継続的かつ大量に」配布したことによって、職場内に人種差別意識を醸成する結果を生んだと認定している。戦後最悪ともいわれる日韓関係、日々喧伝される、中国、北朝鮮による日本の安全保障に対する脅威、ロシアによるウクライナ侵略などを背景に、日本の職場や学校では、当該国の国籍を有し、あるいはルーツをもつ従業員、児童・生徒が、この種のレイシャルハラスメントを受け続けている。東京地裁では、「モルガン・スタンレー」レイハラ解雇裁判という、新たな裁判が闘われている。
控訴審判決は、この状況に一石を投じ、事業主や学校の管理者に対して、人種差別意識が醸成されないよう、配慮義務を払うように促すものである。現在係争中の、そして今後新たに提起されるレイシャルハラスメント訴訟にも、判例として好影響を及ぼすことは間違いない。7年近くの長期にわたる裁判で闘いとった控訴審判決が、多くの外国人住民の権利の拡充につながることは、想像を絶するほどの辛苦を味わった原告にとって、多少とも慰めとなるだろう。
最後に、原告は現在も、いつまた被告らによる人種差別が再開するかもしれないという、強い不安のなかで、フジ住宅で働くことを余儀なくされている。被告・フジ住宅と今井会長に対しては、今回の最高裁による判断をうけて、直ちに原告に対して対し真摯に謝罪することを求める。また、東証プライムに上場する大企業が、異常ともいえる人種差別等の違法行為を繰り返しおこなったことの社会的影響に鑑み、公的な謝罪をおこなうことを求める。さらに、実効性のある再発防止策を策定することも求める。これらがなされるまでは、控訴審判決が被告らの義務であると認定した、原告が真に安心できる職場環境が提供されているとはいうことができない。
なお、前記した謝罪、再発防止策については、原告、原告側代理人弁護士、そして支える会との同席、対話によって内容を検討し、実行することを強く求める。
以上