top of page

第16回口頭弁論期日の報告

 

原告訴訟代理人弁護士 冨田 真平

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 10月31日午前10時45分から午後5時前まで、原告本人、会社の元従業員、原告の上司、そして会長の尋問が行われました。

 

1 フジ住宅による動員と尋問前の異様な雰囲気

 当初は10時開始予定でしたが、傍聴の抽選に並んだ人数が約750名(従前は120~130人程度)であったことから、抽選券の配布等に時間がかかり、開始が45分遅れることになりました。フジ住宅が社内で傍聴を呼びかけたことにより、平日の朝の時間にもかかわらず、フジ住宅の社員・関連会社の社員と思われる人たちが大量に動員された様子(フジ住宅の「支援者」を名乗る人物のブログでは、フジ住宅の社員が500名、その家族・友人が100名と記載されていました)で、これだけをとってみてもフジ住宅の異様さが感じられました。

 このようにフジ住宅側が大量に抽選に並んだことにより、会社側が多くの当選券を手に入れ、会社側の役職者や会長の「支援者」が傍聴席の多くを占める異様な雰囲気で尋問が始まりました。

 

2 原告本人尋問

 午前中から午後の初めまでは、原告本人の主尋問と反対尋問が行われました。

 主尋問では、フジ住宅に入社してから資料配付が始まるまでの社内の状況、資料配付や従業員の感想文の配布などが始まり変わりゆく社内の状況、さら教科書動員や、提訴後の原告に対する攻撃などについて話し、これらの行為が行われる社内の中でどのような思いをして働いてきたのかを懇々と語りました。

 原告の口からは、会社が配布した民族差別的な文書や慰安婦問題についての文書などを見てとてもつらい思いをしてきたこと、そのような文書配布に感謝を述べる従業員の感想文が配られ、さらには「在日特権」デマの文書が配布された後に同僚から「税金払ってないの?」と聞かれたり、上司が「韓国の国民性が嫌い」などと書いた感想文が配られるなど、回りの従業員が配布文書に影響を受けて変わっていった様子、退職後に会社に異議を述べた社員が攻撃されるなど異議を言えない状況であったことなどが詳細に話されました。

 そして、そのような職場の中で韓国人は嘘つきだなどという配付資料に並ぶひどい言葉が、仕事をしている時も家に帰って家事をしているときも頭から離れない日々を過ごしてきたということが話されました。

 他にも会社に対して弁護士を通じて文書の配布をやめるように申入れたが、逆に退職勧奨を受けたこと、提訴後に「本当の意味でのヘイトスピーチが始まる」などという原告を攻撃する感想文が大量に配布され、何度もトイレに吐きに行ったことなどが語られました。

 最後に原告の口からこの裁判についての思いが語られましたが、その中でも「今回の件で会社や会長から受けた傷は裁判が終わっても一生治らないと思う」、「フジ住宅は自分にとっては大切な職場であり会社には変わって欲しい」という言葉が心に残りました。

 その後、会社、会長側からの反対尋問が行われましたが、会社・会長側からの質問に対しても原告は冷静にしっかりと受け答えを行いました。

 

3 会社の元従業員・上司の尋問

 その後、会社の元従業員及び原告の上司について尋問が行われました。

 会社の元従業員は、実は今回問題になっている「日狂組の教室」という漫画や民族差別的な記載のある文書を会長に渡した人物であり、このことを原告側からの反対尋問で指摘され、何のためにこのような文書を渡したのかと聞かれると、「念のため」などと言い、さらには自分の陳述書を示されるとこの文書は何か?と言い出す始末でした。

 また、会社の上司は、陳述書で「自分の都合の良いことしか考えない中国・韓国の国民性は私も大嫌い」という感想文を書いたことや、教科書展示会に原告の所属する部署の社員全員が参加していたこと、会長了承のもと原告に退職勧奨したことをすでに認めていました。さらに反対尋問で、フジ住宅のホームページに掲載されているハラスメントの相談窓口について聞かれると、その存在を知らないと述べ、コンプライアンスに欠ける会社の異常性が浮き彫りになりました。

 

4 会長の反対尋問

 最後に会長の尋問が行われました。

 会長は、主尋問では長々と自分の考えを語り続け、反対尋問では、「在日特権」デマに関する文書やヘイトスピーチが含まれる文書について指摘されると、自分が配布させた文書であるにもかかわらず、ちゃんと見ていないなどと述べ、さらには今回の事件で問題になっている民族差別的な文書について、こちら側からの指摘を受けて内部で検討をしたのかという問いに対して、検討もしていないし反省もしていない旨述べました。さらには、「自分は正しい」、「フジ住宅は素晴らしい」、「こんな素晴らしい会社を訴えたことについて原告も弁護士も反省しろ」、などと述べ、今回の行為の問題性を全く理解せず反省もしていないことが明らかとなりました。

 さらに、会長は、原告側からの反対尋問の際に不規則発言を何度も行い、質問に対してきちんと答えないことも多く、裁判長から何度も「ルールを守ってください」「質問に答えてください」と注意を受けてもその態度が変わることはありませんでした。

 最後まで自分が正しいと言い続け、裁判所のルールすら守らない会長の態度を見て、このような会長に対して会社内で従業員が異議を述べることができない状況が容易に推測されました。

 また会長は、最後に裁判長から、通常全社員に配布しない業務日報を提訴後に全社員に配布したのはなぜか尋ねられ、これを原告に読ませて反省させるために配布したと述べ、原告を攻撃する従業員の感想文を原告に読ませるために全社員に配布したことを認めました。

 

5 いよいよ結審、判決へ

 次回は、2020年1月30日午後1時から進行協議、午後2時から口頭弁論が行われることになり、この口頭弁論で結審となる予定です。したがって、そこから遠くない時期にいよいよ判決が出されることになります。

 4年以上続いた裁判もいよいよ大詰めを迎えています。今回の尋問で改めて原告の被害、そしてフジ住宅、会長の異常さが浮き彫りになりました。原告が尋問の最後に述べた会社に変わって欲しいという願いを実現し、原告が安心して働ける職場にするため、法廷の内外で原告・弁護団・支える会が一体となって闘っていきますので、今後ともご支援いただきますようお願い申し上げます。

 

 

75412151_2411374255802383_88616139680791

第16回期日について(事務局より)

 10月31日の第16回期日では、原告並びに被告側の証人尋問がおこなわれました。被告・今井会長が出廷することから、フジ住宅が全従業員1000名以上に、有給休暇を取得して傍聴するよう呼びかける、実質的な動員をおこなっていました。その結果、600名を超えると思える、従業員、関連会社社員、そしてその家族が押し寄せる異常事態となりました。わずか47席の傍聴席をめぐり749枚の傍聴抽選券が配布され、残念ながら原告側支援者は5~6名程度しか傍聴することはできませんでした。

 

 そのような状態で、原告に自らの生い立ちを含めた被害体験について語ることを強いてしまったことが残念でありません。

 

 しかしながら、原告が語ったフジ住宅内部での被害実態は、極めて具体的で、それによって受けた被害感情も説得力のあるものでした。

 

 一方で、被告側の証人尋問では、在日コリアンの主人公に日本による朝鮮半島植民地支配の歴史を否定させるストーリーによって、原告が強い精神的被害を受けた漫画「日狂組の教室」を会長に「推薦」した社員は、「私は推薦していない。念のためお知らせしただけだ」などと詭弁を弄し、それについて自らの陳述書に記されていることを原告側代理人に問い詰められると、「(自分の意見陳述書について)これは何の文章ですか?」と問い返す、あきれた対応に終始していました。

 

 また、原告の現在の直属の上司への証人尋問ですが、こちらは既に陳述書のなかで、「自分の都合の良いことしか考えない中国・韓国の国民性は大嫌い」という趣旨の文書を書いて、それが社員に配布されたこと、歴史修正主義的な歴史教科書の採択運動に社員「動員」したとしか思えない内容など、原告側代理人が確認したかったことを認めており、その点を改めて反対尋問で確認していきました。驚きであったのは、原告側の代理人から、フジ住宅がホームページに掲載している社内のハラスメント相談窓口について、「そんなんありますか?」と回答したことでした。

 そしてついに、被告・今井会長の証人尋問です。原告側代理人による反対尋問のなかで、フジ住宅で配布された資料の内容を具体的に挙げながら、「これはヘイトスピーチに該当するのではないか?」と問われた今井会長は、「そうですね」と認めざるをえませんでした。また、「それらヘイトスピーチ文書が大量のそうではない資料のほんの一部だったとしても(これは被告側の主張で、実際にはそうではありませんが)、ダメですよね」という問いにも、「それはそうですね」と認めざるを得ませんでした。フジ住宅のなかで、今井会長らが主導してヘイトスピーチ文書を配布したことを、被告自らが認めた瞬間でした。

 そして、「では、なぜ資料配付にあたってヘイトスピーチに該当する部分をマスキングしたり、削除したりしなかったのか」という原告側代理人の問いかけには、「私は正しいことをしているから」と理由にならない回答。

 これ以外にも、被告・今井会長の証人尋問は、本筋から離れた不規則発言や不規則な言動が多々みられました。

 

 印象として、今井会長は自ら認めたヘイトスピーチ文書の配布について、悪いこと、ハラスメントに該当するという認識が全くなく、むしろ今井会長とフジ住宅が主導する政治的な運動を妨害されている、という歪んだ被害者意識すらもっていることがうかがえました。

 午前10時の開廷予定が、フジ住宅側による大量「動員」により40分遅れ、昼と午後3時すぎの休憩をはさみ、6時間以上にわたった証人尋問はようやく終了しました。

 次回2020年1月30日の第17回期日で、ヘイトハラスメント裁判は結審を迎え、年度内に判決が言い渡される予定です。

​引き続き、ご支援とご協力をお願い致します。

​※この記事は、事務局による速報です。弁護団による期日報告はこちらになります。

bottom of page