2019年(令和元年) 7月1 1日
フジ住宅株式会社 御中
大阪弁護士会
会 長 今川 忠
勧告書
申立人(※支える会注:ヘイトハラスメント裁判原告のこと。)より、当会に対し、フジ住宅株式会社(以下「被申立人」という。)による人権侵害の事実があったとして、適切な救済措置を求める旨の申立てがありました(※支える会注:申立は、2015年3月6日付)。当会人権擁護委員会において慎重に審査した結果、以下のとおり勧告します。
第1 勧告の趣旨
1 被申立人はその従業員に対し、大韓民国等本邦外出身者の国民性を侮蔑する文書を配布しないこと
2 被申立人はその従業員に対し、中学校の歴史及び公民教科書の採択に際し、特定の教科書を採択させるための運動に従
事させ、その報告を被申立人にするよう求めないこと
第2 勧告の理由
1 認定した事実
(1)被申立人は、大阪に本社を置き、不動産販売等を行う、東証一部上場の従業員数約1000名の株式会社であり、創業
者は被申立人代表取締役会長である。
(2)申立人は大韓民国(以下「韓国Jという。)国籍(在日韓国人3世)であり、平成20年10月1日以降、被申立人に雇用され
て本名を使用しながら勤務している。
(3)被申立人は、所属する全役職員(出向者、契約社員、派遣社員、パート職員、マンション管理員を含む。)に対し、平
成25年4月から同年7月にかけて別紙一覧表1記載の文書を配布した。
被申立人が配布した上記文書には、「韓国の国民性を痛烈にえぐっている。...嘘と無恥の国なのだ」、「では、な
ぜ韓国人は第三国でこれほど反日活動に走るのだろうか。それは韓国人の習性に由来している。韓国人同士がケンカ
する時は相手の言い分などに耳を貸さず、ひたすら自分の主張を大声で怒鳴り合う。さらに、周りの人々に訴えて自
分の味方を増やそうとする。直接相手に堂々と挑むのではなく、第三者に訴えてねじ伏せようとするのが韓国流のケ
ンカである。彼らは味方を増やすために『いかに自分の主張が正しいか』嘘八百を並べながら、身振り手振り、場合
によっては号泣して周りに訴える」、「・・○○○(支える会注:勧告書原文では在日コリアンの大学教授名)も負
けていない。『金王朝』を信奉する朝鮮学校出身者のせいか・・・息を吐くように嘘をつく反日サヨクの生き様その
もの」「自分たちの悪事を批判されるとすぐに『差別ニダ』と大騒ぎする在日朝鮮族」「韓国も中国も、日本人とは
異なった国民性を持つ民族で、あると認識しなければなりません。私たちは親から『嘘をついてはいけません』と教
育されます。しかし、中国や韓国は『騙される方が悪い』『嘘も100回言えば本当になる』と信じている国民です』
「日本非難を共産党独裁の正当化につなげる無神論の中国と、日本たたきを民族プライドにつなげる情緒的な韓国か
らしか参拝糾弾が出てこない点注目すべきです」「『ワイロは国民性』日本とは逆に韓国・北朝鮮はワイロを当然と
する民族性があります。ワイロを与えることによって見返りを得るという伝統です」「今の韓国も北朝鮮もワイロ無
しでは社会が成り立たないほど、ワイロはまさしく国民性にまでなっています」、「韓国人の思考の中に敵相手なら
どんな非道をしても許されると勘違いしているところがありますよね、確かに野生動物がまさしくこれです。鳥類、
ほ乳類、は虫類ではないが、恐に足りないものに対しての攻撃性は、見るに堪えがたいものがあります」、「韓国は
未だ売春は犯罪という意識もなく普通に売春している」、などの表現が記載されており、かつ、当該表現部分には、
被申立人の代表取締役会長によって、丸印や波線、下線等が記されている。
(4)同じく、被申立人は、所属する全役職員に対し、平成27年5月から同年6月にかけて別紙一覧表2記載の文書を配布し
た。
被申立人が配布した文書は、大阪府下の中学校における歴史及び公民の教科書の採択にあたって、日本教育再生機
構という運動団体から得たアドバイスを基に、その団体が推進する育鵬社の教科書を採択させる運動を促すものであ
り、大阪府下の市町村の首長、教育長及び教育委員を直接説得することと、教科書展示会へ出席してアンケートに答
えることを推奨するとともに、それらを勤務中に行うことを許可する旨の記載がある。そして、それらの運動を実行
した場合には被申立人の代表取締役会長に対して報告することをも求めており、その報告に基づく進捗状況が周知さ
れるとともに、その後の運動方針が指示されている。そして、現にかかる推奨に応じて多くの役職員が上記報告に及
んでいる。
2 当会の判断
(1) 別紙一覧表1記載の文書の配布について
何人も平穏に生活して人格を形成し、自由に活動することによって名誉・信用を獲得し保有する権利は、憲法第13条
に由来する人格権として強く保護され、かかる権利は、国籍・民族の知何を問わず本邦に居住する者に等しく保障される
べきものである。ただし、憲法は私人間の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に直接適用または類推適用
されるものではなし1から、民法第709条その他私法の一般条項の解釈適用を通じて間接的に私人間の行為を規律するこ
とになる。
ところで、一般に私人の表現行為は、個人の基本的な自由として憲法第2 1条第1項に基づき厚く保障されるべきもので
ある。しかし、本邦以外の特定の民族または国籍の出身者を侮辱し、これらの者に対する差別的意識を醸成させる行為
は、憲法第13条、第14条に照らし、社会的に許容される合理的範囲を超えて他人の法的利益を侵害していると認められ
るときは、人権侵害行為にあたり、民法第709条の不法行為(ないし契約関係が存する場合には、契約内容に応じ債務不履
行)が成立すると評価できる。
これを本件についてみると、申立人は、韓国国籍を有する在日韓国人3世として本邦に居住しているのであるから、平
穏に生活して人格を形成し、自由に活動することによって名誉・信用を獲得し保有する人格権を有しているというべきで
ある。
他方、被申立人には、会社の目的に必要とされている範囲で表現行為の自由が保障されているところ、被申立人が、自
身に所属する全役職員に対し配布した別紙一覧表1記載の文書には、いずれも韓国又は韓国国民に対する批判的論評の域
を超えた侮辱的表現が随所に見られる上、被申立人代表取締役会長が、侮辱的表現部分に丸印や下線を引くなどしてい
る。
確かに、被申立人による上記文書配布は、申立人を被申立人の職場から排除することや申立人の人格権を侵害すること
を直接の目的とするものではなく、また、配布された文書を申立人が受領することが強制されていた事実は認められな
い。
しかし、被申立人は、1000名を超える従業員を雇用する東証一部上場企業であり、いわば社会の公器として多様な価
値観・歴史観を許容し、国籍や人種等による差別的意識を排する職場環境の構築が求められるところ、被申立人の創業者
であり、被申立人の全役職員に対して極めて大きな影響力を持つと考えられる被申立人代表取締役会長が、侮辱的表現部
分に丸印や下線を引くなどして上記文書を被申立人の全役職員に配布した行為は、いずれも被申立人の業務に必要とは言
いがたく、被申立人の全役職員に対して上記文書を配布することを保障する必要性に乏しい。
以上からすると、被申立人による別紙一覧表1記載の文章の配布が、被申立人の人格権を侵害したものといえると評価
されたとしても、その評価が不当であるとは決していえない。
(2)別紙一覧表2記載の文書の配布について
憲法第19条が思想・良心の自由を保障しているのは、いかなる国家観、世界観、人生観を持とうとも、それが内心の
領域にとどまる限りは絶対的に自由であり、国家権力は、内心の思想、に基づいて不利益を課したり、あるいは特定の思
想を抱くことを禁止することができないということである。
そして、かかる自由が国籍・民族の如何を問わず本邦に居住する者に等しく保障されること、憲法が私人相互の関係を
直接規律するものではなく、私人相互の関係に直接適用または類推適用されるものではないので、民法第709条その他私
法の一般条項の解釈適用を通じて間接的に私人間の行為を規律することになることは、前記(1 )と同様である。
これを本件についてみると、本邦の歴史、とりわけ明治維新以降の近現代史における歴史的事実については、個人の
歴史観や思想・信条によって様々な評価があることは、公知の事実である。そのため、中学校における歴史及び公民の教
科書は、各執筆者が近現代史における歴史的事実を各々評価し執筆しているので、異なる叙述がされている。したがっ
て、教科書に対する評価は、個人の歴史観その他思想・信条と密接に結びついているといえる。
しかるに、被申立人は、創業者であり被申立人役職員に強し、影響力を持つと考えられる被申立人代表取締役会長が、
被申立人の全役職員に対し、別紙一覧表2記載の文書を配布するなどして特定の教科書を採択させるための運動に従事す
るよう強く推奨するとともに、かかる運動に従事したときは、その内容を上記代表取締役会長に報告することを求めてい
る。そして、現にかかる推奨に応じて多くの役職員が上記報告に及んでいる。被申立人のこの一連の行為は、被申立人の
業務に必要とはいい難く、しかも、被申立人は、これらの収集した報告をどのようにでも使える立場にあるので、例え
ば、上記採択運動に従事したか否かで、従業員の待遇に差を設けることもできる。
以上からすると、かかる運動に従事することを被申立人の全役職員に強制するものではないことが、別紙一覧表2記載
の文書の一部に明記されているとはいえ、被申立人が、その収集した思想・良心にかかる報告を自由に使える立場あるこ
とからして、かかる運動に従事したか否かによって、申立人を含めた従業員がその待遇等において差別的取扱いを受ける
可能性が高い状況下にあるので、申立人を含めた従業員が自己の思想・良心を侵害されるおそれの高いことを否定するこ
とはできない。
3 結語
以上によれば、被申立人による各行為に対し、申立人の救済文は今後の人権侵害の防止につき適当な措置を採ることを勧告することが相当であるから、勧告の趣旨記載のとおり、勧告する。
以上
別紙
一覧表1
番号 認定した事実
1 平成25年4月22日配布
棲田義孝国会議員の秘書からの手紙「韓国の国民性を痛烈にえぐっている。…嘘と無恥の国なのだ」
2 平成25年5月29日配布
月刊WILL-2013年7月号記事「では、なぜ韓国人は第三国でこれほど反日活動に走るのだろうか。それは韓国人の習性に由来している。韓国人同士がケンカする時は相手の言い分などに耳を貸さず、ひたすら自分の主張を大声で怒鳴り合う。さらに、周りの人々に訴えて自分の味方を増やそうとする。直接相手に堂々と挑むのではなく、第三者に訴えてねじ伏せようとするのが韓国流のケンカである。彼らは味方を増やすために『いかに自分の主張が正しいか』嘘八百を並べながら、身振り手振り、場合によっては号泣して周りに訴える」
3 平成25年6月7日配布
正論平成25年7月号記事「・・・○○○(※支える会注:勧告書原文では在日コリアンの大学教授名)も負けていない。『金王朝』を信奉する朝鮮学校出身者のせいか・・・息を吐くように嘘をつく反日サヨクの生き様そのもの」「自分たちの悪事を批判されるとすぐに『差別ニダ』!と大騒ぎする在日朝鮮族」
4 平成25年6月8日配布
中山成彬氏のインタビュー記事「韓国も中国も、日本人とは異なった国民性を持つ民族で、あると認識しなければなりません。私たちは親から『嘘をついてはいけません』と教育されます。しかし、中国や韓国は『騎される方が悪い』『嘘も100 回言えば本当になる』と信じている国民です」
5 平成25年6月11日配布
産経新聞記事「日本非難を共産党独裁の正当化につなげる無神論の中国と、日本たたきを民族プライドにつなげる情緒的な韓国からしか参拝糾弾が出てこない点注目すべきです」
6 平成25年6月12日配布
評論家加瀬英明氏と拓殖大学教授呉善花氏の対談記事「『ワイロは国民性』日本とは逆に韓国・北朝鮮はワイロを当然とする民族性があります。ワイロを与えることによって見返りを得るという伝統です」「今の韓国も北朝鮮もワイロ無しでは社会が成り立たないほど、ワイロはまさしく国民性にまで、なっています」
7 平成25年7月30日配布
機井よしこ氏のユーチューブコメント欄にされたコメント「韓国人の思考の中に敵相手ならどんな非道をしても許されると勘違いしているところがありますよね、確かに野生動物がまさしくこれです。鳥類、ほ乳類、は虫類ではないが、恐に足りないものに対しての攻撃性は、見るに堪えがたいものがあります」
8 平成25年7月30日配布
ヤフー知恵袋にあげられた記事「韓国は未だ売春は犯罪という意識もなく普通に売春している」
一覧表2
番号 認定した事実
1 平成27年5月30日付配布文書
6月19日(金)から2週間教科書展示会アンケートの件
A) 教科書展示会が、6月19日(金) ~ 7月3日(金)迄・・・行われます。
C) (首長や教育長に対し、)中学校であれば「育鵬社」、高校で在れば「明成社」が良いということを・・・お手紙やメール等していただいたら効果的だと思います。・・・(念の為強制ではありませんので、、、)
E) 昨年度、私(会長)が文科省への(送信した)メール添付させていただきます。
F)アンケートの記入方法として、・・・日本教育再生機構からアドバイスをいただき送付してくださいました(添付、・・・ご自分の言葉や思いを記入してくださいネ)
G) 咋年、一昨年と、岸和田市であれば257名、泉佐野市は202名、貝塚市も200名くらい、教科書アンケートに行ってくださいましたが、今年は50名くらい行かれれば十分かナァと思います。・・・市長もしくは教育長にお手紙やメール、FAXを直接お送りいただくほうが、数十倍の効果があると思います。
H)「平成28年度使用教科書展示会場」一覧です。・・・勿論この件も強制ではありません。
I)アンケート記入に行かれる方は、昨年同様、ボールペンで、記入し、フジ住宅の社章と位致被害者救う会のバッジは外して行ってくださいネ・・・女性の方は私服で、行ってくださいネ。
S)市長や教育長にお手紙を書かれたり、FAX、メールをされたり、また会いに行かれたり、あるいは教科書アンケートに行かれる場合は、勿論勤務時間中にしていただいて結構です。
T)市長や教育長の方にお手紙やメール、FAXをされました方は、私(会長)・・(に)ご報告してくだされば、ありがたく思います。
2 平成27年6月16日付配布文書
<第10回>教科書展示会アンケートの件での情報共有<メール文書及び報告書等>とご依頼の件 <ご依頼>「和泉市長・和泉市教育長」・「岸和田市長・岸和田市教育長j宛のお手紙は今後出していただかなくて結構です。理由は、「和泉市長・和泉市教育長」・「岸和田市長・岸和田市教育長」宛に3名の方がお手紙をお送りされております。(一般的に2~3名で十分かナアと思います。)あまり多くの方がお手紙を出すとかえってマイナスになると思いますので。
3 平成27年6月17日~~同月30日付配布文書(9通)
教科書展示会アンケートの件での情報共有(メール文書及び報告書等)とご依頼の件
・社員から各市長、教育委員会委員長等への教会書採択の件でのメール、手紙の写し合計52通
・<ご依頼>と題する書面(特定の市の市長や教育委員長等宛ての「お手紙は今後出していただかなくて結構です。・・・あまり多くの方が出すとかえってマイナスになると思いますので。」と記載されている)
・教科書展示会へ行った件についての社員の報告書合計39通
・社員の経営理念感想文合計7通、業務予定表等合計57通(会長が推奨する出版社以外の他の教科書は「中韓より劣った存在として位置付ける」ものや「自虐史観を植え付けられた子供」といった評価や意見が記載されている)
・配布した過去の手紙が十二分に参考になると判断したので今後は実際の手紙を載せない、との報告
・社外秘として、いくつかの市町村の首長、教育長、私立中学校長に宛てた手紙が、どの社員によって出されたか等を記した一覧表合計18枚